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Prologue
―――鎖の擦れる音が響く。
太陽の光も月の光も届くことのない、無機質な地下牢。床に敷き詰められた石畳は氷のように冷たく、部屋の中は何かが腐敗したような臭いが充満している。
そんな地下牢の最奥。そこに、十二歳ほどの少年がいた。両足に鉄球の付いた足枷が嵌められており、もう何年もここで監禁されているのか、瞳からは光が消え失せ、身に纏っている服もボロ雑巾のように汚れきっている。
少年は、上階から大勢の笑い声が聞こえてくる度に、寂しそうに鎖を鳴らす。
(……今日は、アイナの六歳の誕生日だったっけ……。……なら、僕は今日、捨てられるのか……)
少年は実妹―――アイナ・メドラウトがまた成長したことを密かに喜びながら、六年前に父と交わした『約束』を思い出す。
(アイナが六歳になったら……つまり、僕が十二歳になったら、僕を捨てる……そういう『約束』だったね……)
すぐに捨てなかったのは世間体を気にしてか、と少年は幼いながらもそんな考察をした。
メドラウト家は代々、王家御抱えの魔術師ギルドの幹部を務めるほど有能な血筋を持つ貴族である。特に水系統の魔術に優れた血筋で、火属性に秀でたイグニス家、風属性に秀でたコルネリウス家、地属性に秀でたトリスタン家と合せ、四大貴族と称されるほどだ。
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