prologue

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 最後まで母は父の意見に反対していたが、父の機嫌を損ねては逆に自分が捨てられるかもしれないとでも思ったのか、結局は渋々それを了承した。 (……でも、アイナが生まれて、父は変わった)  ヴィルヘルムが三歳になると、父は熱心に騎士になるための指導をしてくれた。  剣の稽古。肉体の鍛錬。騎士としての心構え。戦術。父は生粋の魔術師であったが、これも息子のためと知り合いの騎士に稽古を頼んだり、時には自分で調べたりもしていた。  だが、ヴィルヘルムが六歳の誕生日を迎えた時。つまりアイナが生まれると―――父は態度を一変させた。  アイナは天才だった。一を聞けば十を知るほど聡く、そしてそれを実現するほど技量が高く、何より膨大な魔力を持っていた。  あとは坂を転がり落ちるかのような展開だ。母はアイナを溺愛し、その優秀さから従者や指導者に愛され、そしてそれに比例するかのようにヴィルヘルムは嫌悪されていった。ヴィルヘルムがこの地下牢に放り込まれ、父と『約束』を交わしたのも、大体それぐらいの時期だっただろうか。 .
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