prologue

5/7

47人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
(父が変わった……かぁ。……父は変わったつもりなのかもしれないけど、どう考えても僕のことを思ってくれてるよなぁ。僕を捨てる日を十二歳の誕生日にしたのは、生き残れる確率を上げるためだろうし。まあ、いつまでも僕を世間の目が届くところに置いておくと何かと面倒だし、周りからも何か言われてたんだろうし……地下牢に閉じ込めるのは仕方ないことだったんだろうなぁ)  十二歳らしからぬ考察をしつつ、ヴィルヘルムは嬉しそうに口元を綻ばせた。  地下牢に閉じ込められてから、今まで六年間。精神が壊れずにいたのは、ひとえに父の優しさがあったからだろう。 (四大貴族の子供から魔術の『的』にされたこともあったけど……父がいたから、今日まで耐えれた。……いつか恩返ししたいなぁ)  そんなことを考えながらヴィルヘルムがため息を吐いた―――その時だった。  地下牢から上階へと繋がる扉が開く音が響き、ランタンンの淡い光がヴィルヘルムは照らした。  久しぶりの光に、ヴィルヘルムは眩しそうに目を細める。 「―――ヴィル」  男性の威厳に満ちた声が、少年の名を呼ぶ。ヴィルヘルムはすぐに、その声の主が父であることに気付いた。  光の加減で、父の表情は見えない。 「……時間だ」 .
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加