プロローグ

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周囲からしてみれば単純じみていても、本人にとっては複雑極まりないなどといった事はよくある話だ。 例えに挙げるなら、俺が握り締めているこのアルミ缶。 買った時点では中身が入った『商品』だが、飲みほした後に残ったこれは『ゴミ』と化す。 その時、こうは思わないだろうか。 ――自分は何の為にこれを買ったんだ?―― 喉を潤す為か。 それとも、ゴミを増やす為に? そんな感受を持たない人間は、それをごみ箱に捨てるか道端に放り投げてしまえるのだろう。 時折、そんな人種が羨ましく思える。 よくもまあのうのうと、と憎々しくもなる。 曲折したが、つまりはこういう事だ。 世の中には、不可視の大前提によって存在する物がある。 ……難しいだろうか? では、何故俺がそんな自問を繰り返しているのか、順を追って説明したいと思う。 誰の為でも無い。 しいて言うのなら、俺の為に。
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