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そう叫びながら、萩原は土煙を巻き上げながら何処かへ走り去っていった。どうやら、多摩の暴れ馬ではなく、多摩の種馬のようだ。
「クソ…………種馬め……」
一人残された荒義はイラつく心を抑えて、その場を後にした。
実際のところ、病院送りになるほどのパンチを荒義は放っていない。
相手が気絶する程度の《弱い》力で。しかしながら今回はやりすぎた。
相手は今まで以上に強力で、手加減があまりできなかったのだ。
まぁその相手が頑丈な体を持っていたおかげで、救急車を呼ばなくて済んだわけだが。
荒義は自分の拳を見つめる。人を殴ったとき、蹴ったとき。あの頃の嫌な記憶を思い出してしまうようで、何だか嫌だった。
萩原にアッパーパンチを打ち込みそうになった時だって、荒義は寸前で止めようと思った。それで諦めてもらえると思ったのだ。だが、違った。
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