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拳を止めることができなかったのだ。相手のせいではない、自分自身の心の弱さゆえだ。
あの頃についた悪い癖だ。
荒義は薄っすらと白い雲の浮かぶ空を眺めて嘆息した。どこまでも深い青色が広がっていた。
今日も荒義は日常の中にいた。
なんてことの無い、退屈だけど、それでも昔よりかは充実した日常の中で。
ただ、まだ少しだけ《居心地の悪さ》は残っていた。それは時の流れの中で消えていくのか、それとも。
「……考えても仕方がないか」
もっと強い人間になろう。心も体も。それならば、さっきの不良たちも戦わずして黙らせられたかもしれない。
荒義は青空から視線を外して歩くスピードを速めた。
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