25人が本棚に入れています
本棚に追加
眼前にそびえ立つのは、二メートルほどはあろうか異形の怪物。漆黒の甲殻。サソリにも似た姿、細長い四肢、よく見ると鋭い甲殻が重ねられた尻尾が伸びている。
頭部はコウモリに似た形で、堅牢な甲殻で覆われていた。
「残念だったなァ、勇者様? お友達たちは全て俺が殺しておいたよ。罠に掛るなんて馬鹿じゃねぇのよ? お前はその《左眼》があっから、生かしておいただけだっての。お前なんざ騎士団の生き残りの勇者サマ、雑魚同然だってさァ?」
エコーの効いた声で怪物は少女を指差して言った。
自分たちは王国の―――人類の最後の希望だったのに……。少女は泣き出しそうになる気持ちを抑え込み、鉄クズ同然の盾を投げ捨てて、地面を蹴り飛ばすように怪物へと駆け出した。
剣を持った右手に力を込め、前方にいる怪物に斬撃を繰り出す。が、剣を持った右腕を怪物に掴まれてしまい、不発に終わった。
「ぐッ……」
最初のコメントを投稿しよう!