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気づくとアラギの右胸を貫いた怪物の右腕を、彼は両手で力いっぱい握っていた。さすがの怪物も、すぐに振りほどけるぐらいの腕力はない。
「今だ、クロナ! やれェ――――――――ッ!」
アラギは少女の声を叫んだ。
クロナは涙を流しながらも、怪物に向かって剣を振り上げた。
怪物は左手を広げると、急いで魔法を詠唱した。
「グッ……しつこいッ!」
怪物の左手に螺旋状に渦巻く闇が現れ、球状で巨大な漆黒のエネルギー体が形成される。それを眼前のクロナへと打ち込む。
瞬間、混沌の闇がクロナの身体に纏わり憑き、彼女の動きを止めさせる。どれほど力を込めても動かない。
そしてクロナの心は再び、深い深い絶望の沼へと沈んでいく。
ダメだ、もう死ぬ。
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