【0】そして世界は死んだ

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 気づくとアラギの右胸を貫いた怪物の右腕を、彼は両手で力いっぱい握っていた。さすがの怪物も、すぐに振りほどけるぐらいの腕力はない。 「今だ、クロナ! やれェ――――――――ッ!」  アラギは少女の声を叫んだ。  クロナは涙を流しながらも、怪物に向かって剣を振り上げた。  怪物は左手を広げると、急いで魔法を詠唱した。 「グッ……しつこいッ!」  怪物の左手に螺旋状に渦巻く闇が現れ、球状で巨大な漆黒のエネルギー体が形成される。それを眼前のクロナへと打ち込む。  瞬間、混沌の闇がクロナの身体に纏わり憑き、彼女の動きを止めさせる。どれほど力を込めても動かない。  そしてクロナの心は再び、深い深い絶望の沼へと沈んでいく。  ダメだ、もう死ぬ。
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