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「結局は顔なんだろ…。」
自室のドアを開けるなり、鞄を部屋の隅に放り出す。
ベッドに仰向けに倒れ込むと、溜息混じりな自分の声が厭に響いた。
「どいつもこいつも…あああああ!何なんだよ!俺が不細工だからって…俺が…俺が…」
学校から家までの帰り道、必死で堪えていた気持ちが溢れ出してしまった。
大声で喚き散らし、スプリングが飛び出しそうな程にベッドを蹴り続ける。
こんなことをしても、気分が落ち着くはずも無いことは自分でも分かっているのだが止まらない。
「何でだよ!何で…俺ばっかりこんな顔なんだよ!」
言葉にすると、苛立ちが余計に募ってきてしまう。
一体俺はどうしたらいいんだ…?
「秀也ー?ちょっとあんたー、何ギャーギャー騒いでんのよー。」
階段の下から母の声が聞こえた。
…別にいいだろ。
放っといてくれよ。
俺は母の問いを無視し、深い深い溜息をつく。
「…まったく仕方ないわねー。…とにかく、もうすぐ晩御飯だから降りてらっしゃい!」
1階から大声を張り上げる母の声は、不快そのものだ。
もともとキンキンした高い声な上に、懶な所為で階段を上るのがとてつもなく面倒臭いらしい。
そういう訳で、俺はこれ以上母の金切り声を聞きたくなかったため、適当な返事を階下に向けて返した。
再び静寂の刻が訪れる。
ふと時計に目をやると、丁度18時を回ったところだった。
母は「もうすぐ晩御飯だから」なんて言っていたが、家の夕飯はいつも19時過ぎが定番化している。
恐らく今日もそのパターンだろう。
ああ、疲れた。
色々なところが痛い。
身体も…心も。
俺は、母が痺れを切らしてもう1度金切り声をあげるまで眠ることにした。
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