家族

5/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
思わぬ事に、サエはとっさに言葉がでなかった。   「おれとねーちゃんは同じ緑竜だ。けど血はつながってない。それでも、おれはねーちゃんのこと、本当のねーちゃんみたいに思ってる」 「…どうして?」   思わず出たのは、疑問の言葉。   「竜は集団で動き、旅をする生き物だ。だから大陸ごとに大きな集落がある。…けど、三年前に集落が襲われたんだ」   竜の集落は、子をある程度育てるため、旅をしている竜の中継地点のため、作られた。その一つ、レンバルド大陸の集落で二人は生まれた。 ロムとレミは生まれた時から仲が良かった。 言っていた通り、竜は集団で行動するもの。その本能から、二人は常に、本当の姉妹のように過ごしていた。 三年前のある日、二人が近くの森で木の実を集めに行った帰り 集落はなくなっていた。 自分の親も、近所の竜も、いつも遊んでいた友達も みんないなくなっていた。 あったのは巣の残骸と、多くの血。   「すぐにわかったよ、それが人間の仕業だって。だからって人間にも知り合いはいたから、完全に憎みはできなかった。だから途方にくれた」   憎くなったなら、復讐を考えたなら、今ここに二人はいない。 いくら竜でも、子竜二体では、結果が目に見えている。 それはそれで楽だったかもしれないが、二人にはできなかった。 だから途方にくれた。   「お互い家族がいなくなって、おれがパニックになってた時、ねーちゃんが言ったんだ」     ――「家族になろう」    
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!