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思わぬ事に、サエはとっさに言葉がでなかった。
「おれとねーちゃんは同じ緑竜だ。けど血はつながってない。それでも、おれはねーちゃんのこと、本当のねーちゃんみたいに思ってる」
「…どうして?」
思わず出たのは、疑問の言葉。
「竜は集団で動き、旅をする生き物だ。だから大陸ごとに大きな集落がある。…けど、三年前に集落が襲われたんだ」
竜の集落は、子をある程度育てるため、旅をしている竜の中継地点のため、作られた。その一つ、レンバルド大陸の集落で二人は生まれた。
ロムとレミは生まれた時から仲が良かった。
言っていた通り、竜は集団で行動するもの。その本能から、二人は常に、本当の姉妹のように過ごしていた。
三年前のある日、二人が近くの森で木の実を集めに行った帰り
集落はなくなっていた。
自分の親も、近所の竜も、いつも遊んでいた友達も
みんないなくなっていた。
あったのは巣の残骸と、多くの血。
「すぐにわかったよ、それが人間の仕業だって。だからって人間にも知り合いはいたから、完全に憎みはできなかった。だから途方にくれた」
憎くなったなら、復讐を考えたなら、今ここに二人はいない。
いくら竜でも、子竜二体では、結果が目に見えている。
それはそれで楽だったかもしれないが、二人にはできなかった。
だから途方にくれた。
「お互い家族がいなくなって、おれがパニックになってた時、ねーちゃんが言ったんだ」
――「家族になろう」
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