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ーカランカラン
誰かが店に入ってきた事を知らせる鈴が、店の中に鳴り響く。
「すみませーん」
「はーい」
中から出てきたのは、黒髪のショートヘアーの少女、サエ。
外ハネした髪と深い藍の瞳が印象的だ。
頭にバンダナを被り、ふんわりとしたワンピースの下にズボンをはき、その上からエプロンをしていた。
「あ、ミルさん。今日はどうしたんですか?」
「ちょっとお腹が痛くて…」
「腹痛ですね。分かりました!えっと」
サエは並べられたケーキの中から、一つを選んだ。
「ストロベリーモンブランです。これに…あ、サキ姉さん!」
「分かってるよ。ほら」
中から出てきたのは、サエと同じ黒髪でポニーテールの女性、サキ。
吸い込まれそうなその透明の蒼は、見る人を魅了させる。医者のような白衣を着ていた。
今投げたのは、小さな小袋だった。
「これに……ーっ」
その袋から出てきたのは、粉。それをケーキにまぶし、何かを呟いた。
「っはい、出来ました!」
サエはそのケーキをミルに渡す。
ケーキを受け取ったミルは、すぐにそれを食べた。
「っ…おいしい!やっぱり良いわね、サエちゃんのお菓子は」
「ありがとうございます」
「お腹の痛みもなくなったわ。ありがとう。また来るわね」
ーカランカラン
ミルはすっかり良くなったようで、気分上々で帰っていった。
此処は町外れの森にある、小さな薬屋。
しかし、ただの薬ではない。
薬を特殊な方法でお菓子に含ませ、お菓子自体を薬にしてしまうというものだった。薬の苦さは全くない。更に食べるとたちまち治ってしまう。
そのため、町では魔法の薬屋として有名だった。
もちろん、普通のお菓子も売っている。
「大分客も少なくなってきたし、そろそろ休むか」
「さんせー。じゃああたし、さっき焼いてたレモンパイ仕上げて来るね」
サエはバンダナを外し、再び奥へと戻っていった。
その時
ーカランカラン
誰かが入ってきた。
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