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「貸してくれてありがとう。面白かったよ!やっぱり英語と日本語じゃおもしろさが違うなぁと思っちゃった」
「・・・どういたしまして」
真珠は差し出された本にゆっくり手を伸ばして受け取った。
「ねぇ、シオン・・・どうしていきなり現れなくなっちゃったの?」
「・・・真珠にこれ以上迷惑をかけたくなかったから・・・」
「・・・シオンが言ったんでしょ、一人は寂しくないのかって」
「そうだけど・・・」
シオンは語尾を小さくして俯いた。
「シオンがいなくなってずっと寂しかった・・・」
「・・・ありがとう、真珠にそう思われるなんて嬉しいな。でも・・・」
「シオンと一緒にいたい・・・」
「!?真珠?僕は・・・幽霊だよ?一緒にいたいなんて」
シオンは驚いた顔をして真珠に言う。しかし、
「分かった・・・真珠、また会おう」
「・・・いつ?」
「それは、真珠次第だから・・・」
「私・・・次第?」
真珠は不安に思った。
「・・・シオン!」
真珠はシオンの腕をつかもうとしたがその体はするりとすり抜けていった。
真珠はシオンを見つめる。
シオンの体はだんだんと薄れていく。
「真珠・・・また今度ね」
気がつくと真珠は校門の隣に立っていた。
驚き、後ろを振り返ったがそこに校舎は無かった。
「・・・シオン?」
腕の中にある本を抱きしめて真珠はその場にしゃがみ込んだ。
「・・・また・・・独りなの?」
*
「退院おめでとう」
病院のロビーで看護師が少年に花束を手渡した。
少年は痩せた腕で大きな花束をかかえて笑顔を作った。
「ありがとう」
髪の毛は真っ白で瞳は青かった。
「しかし、残念ね・・・髪」
「・・・仕方ないですよ」
少年は自分の髪を撫でて無理に笑う。
「でも、貴方が運ばれてきたときは綺麗な金髪だったのに、まさか11年間で髪が真っ白になるなんてねぇ」
看護師の残念がる表情を見て、少年も寂しそうな顔をする。
「あ、じゃあ僕はこれで」
「はい、気をつけてね!」
「ありがとうございました」
少年は頭を軽く下げて入り口を出た。
「シオン!」
外に出ると名前を呼ばれて声のした方へ振り向いた。
そこには真珠が立っていた。
真っ白なワンピース姿で立ちつくしていた。
「・・・真珠、手紙読んでくれてたんだね」
「当たり前でしょ・・・」
シオンが返してくれた本の間には便せんが一枚。
二人の思い出とシオンが長年眠っていた病院の名前が書かれていた。
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