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突然少年が口を開いた。
「僕、黒ってとっても綺麗だと思うんだ・・・真珠の髪も・・・綺麗だよね」
「・・・綺麗?」
「うん、綺麗」
少女は少しだけ少年へと目を向けた。窓から射す光が少年の金髪をキラキラ輝かせていた。
「・・・シオンの髪の方が・・・綺麗・・・」
「ありがとう、真珠」
時間を切り裂くチャイムが校舎に響いた。
「・・・そろそろ帰らなきゃ・・・」
少女が足下に置いてあった赤いランドセルを慌てて背負った。
「本は僕が返しておくから」
少年が本を手に持つと本棚の前に立った。「ここでいいんだよね」と少女の顔を見ながらひしめき合う古い本の間に一冊の本を差し込んだ。
「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
少年は小さく微笑んだ。
それから互いに手を振って少女は図書室から離れた。
*
「まだ、行って無い部屋は・・・」
―図書室・・・!
彼女は階段を一直線に降りていく。玄関まで戻ってくると今日一度も通らなかった廊下を小走りで進んでいった。一番端の教室が図書室だ。
そっと扉を開けると窓から光が射していて空中に舞う普段見えない細かい埃の姿を露わにした。
真珠は室内をぐるりと見回した。
何も無い起こらない。
再度ため息をもらして顔を俯けると足下に不規則な動きをする煌めく小さな影が見えた。頭上を見ると金色の蝶が舞っていた。
見たこともない蝶に目を奪われた。言葉を失いその場に立ちつくした。
蝶は好きなように踊り舞って最後に図書室のガラス窓をすり抜けた。
「!?」
蝶がすり抜けた窓まで行くとガラスを数回叩いた。確かに存在するガラス。
蝶は窓の外でしばらく漂って風に巻き上げられるようにして上へ。
真珠は慌てて掛かった鍵を持ち上げて窓を開け、蝶を探した。
3階、この校舎で言えば最上階で図書室から対角線上、最も遠い教室。そこの窓がどうやら開いてるらしく桟に羽を休ませている。
図書室を飛び出して廊下を走り、階段を一気に駆け上がった。
「ここ・・・鍵が・・・」
ついさっき来て鍵が閉まっていた教室。
5年1組・・・あの子と出会った・・・。
扉に手をかけるとすんなり扉が開いた。窓際には金色の蝶がいてそれから・・・
「ひさしぶりだね・・・真珠」
*
「俺見たんだ!昨日の放課後花籠が本を宙に浮かばせて片づけたんだ!!やっぱり花籠は魔女だったんだよ!」
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