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この春から高校2年生。
かわいい年下の彼女でも作ろうかと新入生に期待して進級した…が、「あれ」のおかげでそれらの願いはもろくも崩れ去った。
*
入学式の後、いろいろと校門の前で新入生たちがたむろしていた。
俺ら2年生は(3年生も)入学式には出ていない。年下の彼女希望者の俺と数名の友人が新女子高生の見物に校門近くでうろついていた。
「あんまり可愛い子いないな」
「イヤ、俺らの学年よりレベル高いって」
「俺あの子タイプだ!」
興奮気味に友人たちが騒ぐ中、俺は冷静に彼女候補を見極めていた。ふと、1人の少女が視界の端っこに座っていた。
校門下の花壇に腰を下ろし、つまらなさそうな顔をして足下を見ていた。それはそれは絵になること…
他の女子とは比べものにならないほど秀麗で可愛らしく、瞳の色はバックの桜に映える紅茶色。肩から垂れる黒髪が光沢をもっている。
「おお…」
少し声を上げてしまった。
その声に気がついたのか友人が俺の目線を追ってその少女を見つけた。
「おお…」
同じ歓声を上げてから俺と目をあわせた。
「「俺がもらったぁ!」」
同時に叫んだのは言うまでもない。
しかし声を上げすぎたのか、その少女の眼が俺らを捕らえてきた。きょとんとした顔がそれはまた可愛らしい。
そう、ここから俺への衝撃サプライズへのカウントダウンがスタートした。
少女は俺らの方を見てにっこり微笑みを浮かべると腰をゆっくり上げた。何事かと思い俺らは再び目を合わせた。そして少女の方を向き直すと,まさかその少女がこちらに歩いてきている。
―これはチャンス!
等と思いつつ声をかけようと口を開きかけた。が、少女のしゃべり出しの方が一瞬速かった。
「魔王陛下、こちらにいらしたのですね。お迎え長らくお持たせいたしました。」
ずいぶんと丁寧な口調でそんなことを俺に向かって言ってきた。
まさにサプライズ…
何の悪ふざけか、はたまた不思議ちゃんを装いやっかいな男を寄せ付けない作戦か…
何しろノリというものが、ここは大切だと判断した俺は自分なりに返事を返してみることを考えた。
「すまない。私もずいぶん待たせたようだ(笑)」
と、恥ずかしくはあったがそれっぽい台詞。
「滅相もございません!私ここで陛下にお巡り会わせていただいたこと光栄に思います!」
折れずと少女の返答。さらにそれっぽい台詞を重ねる。それに対してためらいなく返してくる少女。
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