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そんな話をしていておかしいと思った頃にはスタートから5分が経っていた。
「なぁ、こんな話してて面白いか?」
会話を遮るように俺が口を出した。
「はい、私魔王陛下とこのように久しくお話させていただいてとでも楽しいです。」
微笑み、両手を頬の隣で合わせる少女。冷たい汗が俺の頬に一本の線をかいた。
―こいつ…ただの不思議ちゃんじゃねぇ…
「立ち話もいかがと思います、是非我が国へ帰りましょう陛下」
彼女の言葉を無視し、周りを見る。一緒にいたはずの友人たちは俺らを気遣ったかのように遠く離れていった。
「陛下?どうかなさりましたか…」
本気で心配そうな表情をして、俺の顔をのぞき込んできた。唾を飲み少しだけ笑って少女に言った。
「悪いけど、俺用事があるんだ…家に帰っていいかな?」
「はい、分かりました。今晩もう一度お迎えにあがりますね」
一瞬ぽかんとしたが再度笑みを浮かべると少女は俺から離れて人の波に飲み込まれていった。
胸をおろす暇なく、俺は急ぎ足で家へ戻った。
*
「にしても妙ちくりんな奴だったなぁ…美人だったけど…」
無事帰宅した俺はお休み前のトイレへと足を向かわせていた。
トイレのドアノブに手をかけて何気なくドアを開くと目の前には豪奢な金の玉座が赤いカーペットの上に堂々と鎮座していた。
「……。」
言葉を失った。意識まで失いかけたがそれは大丈夫だった。
慌ててもといた自分ン家に帰ろうと背を向けたドアにのばした手が何もないところを彷徨った。後ろを振り返ったが…廊下とトイレをつなぐ筈のドアははじめから「ここにはゴザイマセーン」と言うように消えていた。
顔が引きつった。
―まさか…
どこからか扉の開くキィという音。
音がした方向へ首をひねると新入生の不思議ちゃん…らしき人物が立っていた。
というのも顔、雰囲気と確かに彼女だったが、黒かった筈の髪は銀色、紅茶の瞳はバラの様な真紅に染まっていた。身にまとっているのは腰に大きなリボンを付けた豪奢なフリルの青いドレス。
「陛下お帰りなさいませ。あなた様の国“パラテイラ”へ」
そうだ…コレが一般人であり何処にでもいるような高校生男子が…妙ちくりんな女子とあったがためにこんなことになるとは…。
「え~っとさぁ…一応ここがどういう所で俺がこれからどうなって、俺やお前が何者か説明してもらっていいか?」
「!?」
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