1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…陛下…帝一様はギデオン陛下の生まれ変わり。陛下そのものという訳ではございませんが、あなた様は神崎帝一様であると同時にギデオン陛下でもあるのです。つまり、帝一様とギデオン陛下のご記憶は共有されておられるのです。なので帝一様に、陛下自身である自覚が沸き次第、過去のギデオン・ソヴィム・レングラント陛下であったご記憶が思い出されるということです。」
「つまりギデオンの過去は俺の過去…若かりし時の俺!と同じ記憶になるってことか」
「(かいつまみますと)そういうことです」
なんとなくではあるが理解できて満足だ。ロレーナも満足そうな顔をして2回うなずいた。
「では、帝一様は自らが魔王であることを認めその責務、果たしていただけるのですね」
ロレーナは両手を顔の前で合わせると片足を少し引いた。
―ん?魔王…陛下?
「なぁ、一ついいか?魔王ってことはその…悪魔とかを従えるってことか…?」
我ながら想像して恐ろしくなった。少しばかり背中に汗をかいた。
「いいえ!悪魔などあんなはしたない者たちとは違います。我々は純潔の魔族。古代より自然に使えてきた者ばかりです。」
「へぇ…」短くかえした。少しムキになったロレーナの口調が何故かとても恐ろしく感じられた。
「それで、帝一様…どうなさりますか?」
「どうって…魔王になることか?俺1人で決めていいことなのか?ほら、国民とかさぁ!みんなに聞かないと…」
ロレーナの恐ろしさがまだ宙をさまよっている様な気がして尻込みしてしまう。
まったく、魔族とは皆こういう者なのだろうか。
「それならご心配なさらず。我々の中で魔王陛下はギデオン陛下のみ、そのお生まれ変わりである帝一様です、誰が咎めることでしょう。…仮にそのような者がいるとなればこの私が1人残らず…」
ロレーナの紅い瞳がゆらゆらと紅蓮の炎のように揺れた。そして襟の下から数本の長い針をのぞかせた。針の先が不気味に光る。
思わず唾を飲んだ。
―コイツ…殺る気だ…。
冷たい汗が頬を伝う。ロレーナはすっかり殺気づいてしまっている。この場を和ませようと俺は必死で考えたがロレーナが喜びそうなことはただ1つ。
俺が言うか言うまいか寿命を縮めながら考えた。その間約3秒。
「俺、魔王やります!」
声高らかに俺はわざとらしく手を挙げて叫んだ。
最初のコメントを投稿しよう!