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それを聞いてロレーナはあっけに取られたような顔をしていたが、途端に少し頬を桃色にして今まで見たことのない笑顔で俺にボディアタック!じゃなくて、抱きついてきた。
「なッ!?」
驚きのあまり顔が赤くなった。
「お帰りなさいませ!魔王陛下!!本当にこの日を待ちわびておりましたぁ!」
嬉しそうでもあり、はたまた泣きそうでもあるロレーナの高い声。
魔王陛下はずいぶんとロレーナに愛されていることが分かった。
*
そして俺は目が覚めた。
トイレに行った所から夢なのか。ベットの上に突っ伏して寝ていた。当然のことながら息苦しい…。
「なんだ…夢か…」
夢で良かったとも思い切れず複雑な心境だ。時計をみると短い針はまだ3を指していた。
―…まだ…寝れるな…
俺は複雑なまま再び枕に顔を埋めた。
*
きらびやかな朝の日差しを浴びて登校。
昨日のあれはやはり夢だったのか…
しかしロレーナとの会話も、抱きついて来られた時の感覚もまだ確かに残っている。
逆にハッキリとしすぎていてリアルではないような気もした。
「はぁ…」
重たくため息をついた。
「おはようございます、陛下!!」
そう後ろから声をかけられて振り返ると黒髪のロレーナ。瞳も紅茶色に戻っている。
「お、おはよう」
しかしロレーナは俺の横をさっとすぎていってしまった。
もしかしたら、あの子はロレーナではないのかもしれない。そう思うとよけいに体が重くなった。
表情がコロコロと変わり、時に恐ろしく一緒にいて気は休めないが確かに可愛かったと思っている。
気がつかれたまま俺は教室へと向かった。教室の扉をいつもの通りあけると俺の目の前に銀色の髪が現れた。
足下には赤い絨毯。
銀色の髪の持ち主が振りかえり頬を染めて笑顔で言った。
「お帰りなさいませ、魔王陛下!戴冠式の準備が整っております。」
さっきまで夢だったことに肩を落としていたが、夢でなかったことにたった今肩を落とした…
―俺、魔王になることになったんだ…
思わず頭を抱えた。
―もう遅い…か…
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