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side比良波 俺の同室者は平凡だった。 最初、俺に対して敬語使ったことから あぁ、此処の風習を分かってるんだなと思った。 けど、自己紹介をしたら タメ口になって 親しげにな感じになったから あぁ、コイツは本当に"普通"の奴 なんだなって思った。 それに、むず痒い気持ちになったのは 一瞬のことですぐになくなるのだと 思うとイラつきが少し沸いてきた。 どうせ、此処の風習や 詳しく俺のことを 知ったらよそよそしくなったり、 媚を売ってくるに決まってる。 なら、いっそのこと 俺が此処の風習を 教えてやろう。 そんな悪趣味なことを考えて ソイツを押し倒した。 思ったとおり驚いて抵抗ができてない。 しかし、ソイツから発しられた言葉に驚いた。 コイツは少なからず、此処の風習を 聞いたらしい。 まぁ、無意識に口に出てるのに気づいてないようだからちょっといじってみた。 そして、またソイツの口から出た言葉に驚く。 まだ、学生である俺のことを芸術家と言った。いつも俺が意識して人をみるようにしているのに気づいて観察眼が優れていると言ってくれた。 本人はきっとまた無意識に口に出してるだろうから、本心なのだろう。 こんな初対面の奴の言葉に 泣きたくなる気持ちはなんだろう。 コイツには、深い意味なんて あるはずもないのに 今まで、才能という軽い言葉で 片付けられてきた俺の努力を 認めてくれたみたいで 色んな感情がごちゃまぜになっていく。
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