第1章

21/21
前へ
/332ページ
次へ
「今度三人で遠乗りに行かないか、セシア」 エミリアンが屈託のない笑顔をセシアに向けて、明るく誘った。 「おまえは遊ぶことしか考えてないんだな」 アレクは、呆れた表情を作って言ってやった。 「人生、楽しまなきゃ損だぜ?それに、遊んでいても、剣の腕はアレク親衛隊長より立つからな」 揶揄するような一瞥をアレクに投げて、エミリアンが痛いところを突いてくる。 「遠乗りか。いいな。テレアス湖のあたりなんか、どうだ?」 セシアがさわやかに笑って、さり気なく助け船を出してくれる。 セシアとアレクとエミリアン……幼なじみで親友の三人が揃うと、いつもこんな調子だった。 たわいのない会話の中に互いへの想いが交錯し、この二人と顔をあわせるたびにアレクは、自分たちが強い絆で結ばれていることを痛いほど感じるのだった。 エミリアンだって本当は、沈みがちなセシアの気を引き立たせようと、遠乗りに誘ったのだ。 空に響く轟音を、いち早く耳にとらえたのはセシアだった。 あでやかな美貌にかすかな憂慮を滲ませて、セシアはつかつかと窓辺に歩み寄った。 アレクとエミリアンも、競うようにセシアの傍らに歩み寄り、長いローブの裾を払って蒼弓の空を見あげた。 ゆっくりと、それが近づいてくる。 晴れ渡った空に忽然と現れたのは、銀色に輝く小型の宇宙艇だった。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

457人が本棚に入れています
本棚に追加