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綺麗な亜麻色の髪の毛と、垂れ目がちの愛くるしい顔立ち。
このコーヒーだって彼女が気を利かせて持ってきたもので、花火セットを持参した私とは偉い違いだ。
「彼女があんたのこと見てる。行ってあげなさいよ」
「あん? おお、あれはキスしてくれのサインですな」
「ナンテ破廉恥な。そんなことしてたら子供ができちゃうんだからね」
「女の子がいいなー」
そう言って彼は遠い目を真っ黒い海に据える。その未来に私はいない。
そりゃあそうだ。彼と彼女はラブラブなのだから。クラス公認の爽やかカップルとして、卒業文集にランクインするに違いない。
一方私はそんな二人を妬む意地悪な女なのです。
少女漫画に登場する性格の悪いアレだ。御伽噺なら意地の悪い魔女かもしれない。カーディガンの袖で涙を拭って、私は立ち上がる。
「帰る」
「うん? もう?」
「明日も打ち上げがあるんでしょ? だったらそれで充分。女の子は朝も色々と忙しいのよ。早く寝て、早く起きるのデス」
卒業式は滞りなく終わって、最後のHRも五分前に終了。正門前は卒業生とその保護者で賑わい、ナンダカ憂鬱を助長させてくれる。
殆ど無意識で探してしまう彼の姿は、長年の経験のお陰か直ぐに見つかる。
学生服の胸元に添えられた赤い花を照れくさそうにイジル彼は、両親と談笑中。
その隣に件の彼女が付いていて、私の醜い心がギュッと痛んだ。同じ大学に進学するのだという。近々同棲でも始めるのだろう。今や二人は親公認の仲だ。
私と違って料理もできるし、礼儀作法もバッチリ。オマケに日本有数の偏差値を誇る大学に揃って現役合格。
ナンデスカ、この完璧超人は。相手にするのが馬鹿馬鹿らしくなってしまう。そう、私は敗走した女。
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