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まあ、仕方がないのです。彼と彼女をくっつけたのは他でもない私なのだから。
彼女が告白するのを、隣の教室で聞いていたのだから。
恋愛ドラマよろしく「ちょっと待ったぁ!」と駆け込めばよかったのに。
負けるとわかっていても、惨めだと知っていながらも。
そんな風に睥睨を続ける私の肩を誰かが叩いた。振り向けばそこには昨日のロケット花火馬鹿がいて。
柄にもなく頬を赤らめている。この展開はアレデショウ。告白デスカ。
案の定、ロケット花火馬鹿は愛を囁いた。途端、周りから上がった歓声に私はこれでもかとおメメを大きくする。なんていうか、絶望的。
ふと見た彼も拍手をしていて、オマケに私のパパとママまで衆人環視の中に混ざっている始末。
殴ってやろうかと瞼を閉じた私の手首を握って、引っ張る花火馬鹿。連れられたのは、ベタにも校舎裏。
桜色の花弁が舞い散る、粋な空間。体育倉庫の鉄扉に寄りかかりながら頬を掻く馬鹿花火は「どう?」と尋ねてくるのだった。
どうも何も、好きではない。きっと私はこうやって卑屈に歳を取って、ひとりきりで最期を迎えるんだろうなぁと暗澹な気分に陥る。
そんな私の態度から察したのだろう。花火馬鹿は「そっか」と呟いて微笑んだ。
清々しい笑顔で――自分だけ、勝手に満足して。私に複雑な感情を押し付けて。
男なんて大嫌いだ。デリカシーがなくて、自分勝手で、ガキで、臭くて、人を勝手に振り回す。
「いまどんな気分? 勇気を振り絞って言葉を作って、それでも断られちゃう気分っていうのはどんな感じなの?」
「ひっでぇ。鬼畜にも程がある」
なんて言いながらも彼は相好を崩して「うーん」と唸り始める。
「当たって砕けた武士な気分」
「わからん」
「転ぶなら前のめりにってね」
「はっはっは。だっさー」
そんな私にはけれど花火馬鹿を笑う資格はないわけで。
だって私は踏み出そうともしなかった。だから転ぶことさえもできなかった。
「好きなんでしょ? アイツのことが」
花火馬鹿は唐突にマジメな顔を作って言う。
私はそんな彼の鼻頭にできたニキビを見ていた。
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