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考えてみてほしい。振られたばかりとはいえ、好意を寄せている相手に抱きしめられる状況を。これはいわゆる、おいしい状況というものではないだろうか?
例にもれず、この状況に少女の心拍数は早くなり、恍惚とした表情を浮かべている。
そして、少女は先輩に対し、恥ずかしそうに声をつむぐ。
「・・そんなに優しくしないで下さい。期待しちゃいます。」
「ごめん。泣かせてしまったね。」
先輩の柔らかい声が少女の傷ついた心を和らげ・・・和らげっっ・・・・ナレーター、この甘い空気にもう堪えられません。
な・に・が『泣かせてしまったね。』だ、このっ・・女っタラシが!無駄に綺麗な声出しやがって。しかも二人の間に、なにかキラキラした空気まで・・・これって振った後の空気じゃないよね?ナレーターもうこれ以上ツッコミ出来ないのが残念です!
だがしかし、この状況を空気の如くナレーションする事が私の存在意義であり・・・私は空気。私は空気。むしろ空気。・・・ナレーション継続します。
先輩は少女の涙をハンカチで拭きながら少女への気持ちを伝える。
「君の気持ちはうれしいけれど、かわいい後輩としか・・見れないんだ。」
「ごめんね?」
先輩の、その言葉で満足したのだろうか、少女は泣きはらした顔にぎこちないながらも、笑みを浮かべる。「謝らないでください。先輩の気持ちがわかりましたから。」
「後輩としかみてもらえないのは残念ですけど、先輩にかわいいって言って貰えてうれしかったです。」
「ありがとうございました!」
そう言うと、少女は校舎裏から去っていく。
その姿を見つめながら先輩は呟く。
「出てきなさい。」
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