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ドドッ ドドッ ドドッ
ハアッ ハアッ
馬腹を蹴ると、ぐんっと速度が上がる。
視界の端では、冷たく光る枝が、ビュンビュンと凄まじい速さで後ろへ飛び去ってゆく。
突如として、頭上を覆う枝が途切れ、視線の先が明るく開けてきた。
「止まれ!」
元通は馬を止めると、眼前の光景をしっかと睨み据える。
「息を調えよ!」
雪原を渡ってくる風に混じって、煙の刺激臭が鼻腔に纏わり付く。
林のへりで足を止めた武士達の目の中には、焼け落ちた村落の無残な姿が飛び込んできた。
「物見を出しますか?」
中村春続が、元通の顔を覗き込む。
「いや、暇が惜しい。」
元通が、煙のくすぶる残骸から目を離さずに答える。
「このままゆこう。」
「御意!」
指揮官らの緊張感が伝わっているのだろう。
馬上衆は馬から下り、足軽達も槍を構え直した。
スゥ
大きく息をを吸った元通が、采配を振り上げる。
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