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「押し出せえ!」
「おお!」
うおおおおおおおお
元通の周りに数人の足軽を残して、中村春続率いる軍勢が、一斉に駆け出した。
徒歩武者に囲まれて、たずなを操る春続の上半身が、群れから突き出て見えている。
その周囲には、すすきの穂のように槍を立てた足軽達が従っていた。
軍勢の移動に合わせて、真っ白に被われた地面から、雪の塊が跳ね上がっている。
その軍勢が、視界をさえぎる煙の中へ次々と吸い込まれていった。
だが…
妙に静かなのである。
突貫の声も剣戟の音も湧いてこない。
ガラッ ガランガラン
燃え尽きた梁の崩れる音が、いやに大きく響いてくる。
やがて、半ば焼け落ちた民家のかどから、徒歩武者が駆けてくるのが見えた。
ハアッ ハアッ ハアッ
はずむ息が、顔の周りで白く凍りつく。
徒歩武者は、元通が待ち受ける前でひざまづいた。
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