輝元

15/39
前へ
/475ページ
次へ
そこへ春続が蒼白な顔を覗かせた。 「ダメだ。生き残った村の衆は、みんな連れ去られとる。」 「おのれえ!敵が何処へ向かったか分かるか?」 「ああ、足跡がついとるからな。」 春続が村の外を指差す。 そこには、多くの足跡が入り乱れ、枯れ草に積もった雪を踏み荒らし、雪原に延々と道を作っている。 元通が馬上で身を乗り出した。 「なんとか追えぬものかな。」 「追えぬことも無いが、どうする気だ?」 「さらわれた村の衆を取り戻すのだ。」 「難しいぞ。」 「分かっている。」 元通は、雪原の彼方に視線を馳せる。 「だが、主命を受けて此処まで来ながら、村を守るどころか、村の衆まで奪われたのだぞ。」 「うぅむ。確かにかかる恥辱を受けたままでは捨て置けぬが…」 「おおよ!おめおめと帰れるものか。」 「分かった。ヌシがその覚悟なら、やってみよう。」 「おお!かたじけない!」
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

265人が本棚に入れています
本棚に追加