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そこへ春続が蒼白な顔を覗かせた。
「ダメだ。生き残った村の衆は、みんな連れ去られとる。」
「おのれえ!敵が何処へ向かったか分かるか?」
「ああ、足跡がついとるからな。」
春続が村の外を指差す。
そこには、多くの足跡が入り乱れ、枯れ草に積もった雪を踏み荒らし、雪原に延々と道を作っている。
元通が馬上で身を乗り出した。
「なんとか追えぬものかな。」
「追えぬことも無いが、どうする気だ?」
「さらわれた村の衆を取り戻すのだ。」
「難しいぞ。」
「分かっている。」
元通は、雪原の彼方に視線を馳せる。
「だが、主命を受けて此処まで来ながら、村を守るどころか、村の衆まで奪われたのだぞ。」
「うぅむ。確かにかかる恥辱を受けたままでは捨て置けぬが…」
「おおよ!おめおめと帰れるものか。」
「分かった。ヌシがその覚悟なら、やってみよう。」
「おお!かたじけない!」
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