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「速やかに交代せよ!」
春続が若々しい声を張り上げて命じた。
俯いて歩く足軽どもも、ついその勢いにのせられて声をあげる。
「ぎ…御意い!」
ハアッ ハアッ ハアッ
不意に中村春続が足を止め、あたりの林を見回す。
いつの間にか、目の前には、枝の上にもこもこした雪を載せている潅木林が広がっていた。
「如何致した?」
神西元通が訝しげに問い掛ける。
「何ぞ不都合でも出来たのか?」
「いえ。ですがこれでは、いくら先回りしても、敵に感づかれてしまいましょう。」
春続が、眉根を寄せた渋い顔で、背後を振り返った。
そこには、雪の中にくっきりと自軍の足跡が残されている。
元通もその意味に気づいたらしく、苦い表情で頷いた。
「むぅう…確かにこれでは、我らの居所を教えているようなものだな。さて如何したものか…」
「…では、こうしましょう。」
ひとしきり考えていた春続が、ようやく眉を開いて切り出す。
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