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すると、林のふちを木の間越しに見え隠れしながら、数人の武士が近づいて来る。
その武士達は、しきりにあたりをキョロキョロと見回していた。
そのうちの一人が元通の姿を認めると、みなが雪を蹴散らして駆け寄り、その足元にひざまづいた。
武士達は、しばし、白い息をはずませ、呼吸を整える。
「申し上げます。」
「うむ、どうじゃった。」
「敵は別所弾正の手勢にて、その人数は50人がほどと覚えます。」
「別所弾正か…梟の眷属め。だが人数ならば、こちらも引けは取らぬな。」
「敵は街道をこちらへ向かって来ます。」
「よし!いいぞ!」
中村春続が、興奮を押し殺した声でつぶやく。
元通は、春続に目配せして采配を下に向けて振った。
春続がハッとして、身を伏せながら手勢に命じる。
「伏せよ!」
「ははっ!」
家来達が、慌てて雪の中に身を伏せた。
「来ました!」
物見頭が、鋭い声と同時に街道を指差す。
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