輝元

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先頭を歩いているのは、菅笠を被り肩に藁簑を引っかけた農夫達だ。 笠や肩に堆(うずたか)く雪をつもらせている。 俯き加減で雪を踏むたび、ギュッギュッと音が聞こえてきた。 「先頭はやり過ごせ。」 元通が小声で、そう命じながら振り返ると、春続と目が合う。 春続の目は、緊張感をはらみながらも落ち着いている。 元通が目で頷くと、春続も力強く頷いた。 行列が目の前に差し掛かると、丁度そこで、痩せこけた農夫が、よろめいて膝を着いてしまう。 途端に武士達から罵声が浴びせられる。 「何をしておる!」 「さっさと道を造らねば、素っ首をはね上げてくれるぞ!」 「ひいっお許しくだせえ。」 武士達の罵声と農民らの悲痛な声が、風の音に雑じって林に届く。 「くっおのれえ…」 春続が食いしばった歯の間から呻き、蒼白な顔面に目ばかりぎらぎらさせる。 元通が采配を振った。 「放てえ!」 パァン パパパァン
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