輝元

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ぐええっ うっ撃たれたあ 行列の中ほどで、足軽達がバタバタと倒れ伏した。 てっ敵じゃあ 何処から撃ってきたんじゃい 別所勢の行列がざわざわと乱れ、雪原を蹴散らして慌ただしく散開した。 武士達の足元では、踏みしだかれた枯れ草と雪が、薄汚れた塊を作り出し、それが軍勢の足取りを鈍らせている。 周囲を固める足軽どもは、緊張した面持ちで、キョロキョロと落ち着きのない視線を四方に走らせた。 「射取れや者ども!」 森閑たる林の中に弓頭の声が響く。 ザンッ 雪を被った林の陰から、片膝立ちの弓足軽が身体を起こし、一斉に矢を放った。 ぐああ けえ いぃい痛でええ またしても2~3人の足軽が転り、雪を跳ね上げてのたうちまわる。 あ!そこじや! 敵はそこにおるぞ! 別所勢の馬上衆達が、林を指差して、口々に騒ぎ立てた。 おのれえ!こそこそしおって! かかれ かかれえ!
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