輝元

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激昂した武士達が、馬を駆り立てて林に向かってゆく。 周囲を守る足軽どもも、武士達の後を追って駆け出した。 ドドッ ドドッ ドドッ うっおおおおおおおお 「構え!」 林の中では、鉄砲頭の冷静な声が響いた。 頭の声に応じて、巣口を持ち上げた足軽達は、息をひそめてじっと耳を傾ける。 「まだ撃つな。手前まで引き付けよ。」 「そりゃあ!敵は目の前ぞ!」 別所家の武士が、馬上槍を振るって叫ぶ。 「一揉みに突き崩せえ!」 「放てえ!」 パン パン パァン 飛び込もうとした別所勢の鼻先で、鉄砲が火と黒煙を吐き出した。 馬上の武士が一人、驚愕に目を見開いたまま、鞍から跳ね飛んで雪の上を転がる。 家来の足軽達が、群がり寄って主人をかばい、戦意を失って退く。 別所勢は、またたく間に、戦力の五分の一が戦闘不能に陥ったことになる。 「こりゃあいかん!」
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