輝元

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振り返った別所家の武士達が目を剥いた。 「げえ!」 「してやられたか!」 気づけば、神西勢はすぐ目の前にいる。 後退して、陣を組もうとしていた矢先のことだ。 別所勢にしてみれば、振り向いたところへ突入されたようなものであろう。 「くっこなくそ!」 「おのれ!」 恐れた別所家の足軽どもは、目に狂乱の光を浮かべ、てんでに槍を突っかけだした。 武士の命令を待っていられるほど、悠長な状況ではなかったのだ。 気が付けば、別所勢の陣列はバラバラになっている。 神西勢は、その混乱した槍を次々とくぐり抜け、懐中に飛び込んで暴れだした。 「ダメだ!割り込まれたぞ!」 「にっ逃げえ!こいつぁ勝てっこねぇぜ!」 恐れをなした別所勢は、早くも浮足立ってしまう。 「くっ逃げるでない!」 「踏み止まるのじゃ!」 別所家の武士達が、喉を嗄して声をかける。
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