輝元

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が、輝元に聞こえるように声をあげた。 「先程から小早川左衛門佐殿が、別室にてお待ちでありますが、如何はからいましょうや。」 この無礼を咎めようと、近習が口を開きかける。 ところがそれより早く、輝元が足元の武士に声をかけた。 「おお!叔父上が…。」 そう言って輝元は、当惑気味に眉根を寄せてしまう。 この厳しい叔父と顔を合わせる時は、いつも何となく気詰まりを感じてしまうのだ。 それでも、再び目をあげた時には、普段通りの落ち着きを取り戻している。 そして、ひざまづいている武士をおもむろに見下ろすと、きびきびとした口調で答えを返す。 「すぐに予の御座所へお通しせよ。」 それだけ言うと、輝元は、しゃんと背筋を伸ばして歩きだす。 先程からのしどけない風情とは打って変わり、心なしか、顔の赤みまでひいたように見える。 御座所に入ると、待つほどもなく、廊下から足音が聞こえ、スッと襖が開かれた。
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