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腰を下ろしたばかりの輝元が、慌てて顔をあげる。
「叔父上、如何なされましたか?いささか性急なご様子ですが。」
「うむ。因幡国から使いが来ておるのだ。」
「ほほう。因幡国といえば、武田刑部少輔からですかな。」
「そうだ。武田高信だ。」
「それで刑部少輔は、何と申し越しておるのですか?」
「うむ、それがな…」
隆景は眉をひそめて、しばし言いよどんだ。
輝元は、この厳格な叔父が、再び口を開くのを待った。
やがて隆景は、気難しい顔を崩さずに続きを話しだす。
「高信めは、援軍を求めてきおったのだ。」
「援軍を?ほう、一体、何があったのです?」
「それが…な…」
隆景は、ますます苦り切った表情になった。
「またしても尼子のネズミどもが、チョロチョロしとるのだ。」
「尼子家の残党どもめ、今度は因幡国へ?」
「そのようだな。」
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