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その幼さの残る顔には、うっすらとしたヒゲが生え始めているのだ。
考えあぐねた輝元は、バンザイをするように両手を挙げてみせた。
「如何したものかなあ…」
「では、兄上にはお知らせせず、黙って事を始末するというのは如何でしょうか。」
「しかし、それでは…」
山陰の事は吉川元春の裁量に委ねる、との取り決めに逆らうことになるではないか…
「毛利家の頭領は、今は殿であります。」
渋る輝元の顔を厳しい表情の隆景が覗き込んだ。
「殿のお言葉の他に守るべき掟などがござりましょうや?」
「…分かった。では、毛利家の頭領として命じよう。この件に関しては叔父上にお任せいたす。良きように計らいそうらえ。」
「御意!確かにこの一件、お与りいたしました。」
隆景は、深々と額ずいてから、ゆっくりと腰をあげた。
その威風あたりを払う後ろ姿を見送りながら、輝元は独りごちる。
「…それにしても、また尼子…山中鹿介か…」
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