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「おー、やってるやってる。」
隣から、才夏の呑気な声が聞こえた。
昼休みの校庭の一角で練習しているのは、男子ダンス部。その中のエースが女子に大人気なのだ。
で、そのエースっていうのが……
「やっぱり葉月って動き綺麗だよね。」
才夏の言う、葉月-葉月空。ダンス部のエースであたし、夏川日向の幼なじみ。
「なんで葉月って、あんなに動けるくせにスポーツダメなんだろうね。なんかあったの?」
「……なんであたしに聞くのよ。」
「だってあんた、葉月の幼なじみなんでしょ。」
……いつもこうだ。あいつとあたしは、だいたい"幼なじみ"という言葉でひとくくりにされる。
あたしはそんな言葉、大嫌いなのに。
「……そのぶん音楽と勉強で補ってんでしょ。あと、クールさ。」
あたしは、窓からそっぽを向いて自分の席に戻った。
「確かにそうかもね。葉月、超音楽少年だしね。だって……えっと、何できるんだっけ。」
「ピアノ、アルトサックス、ドラム、ギター。」
「そうそう……すごいよね。そんなにできるとか。」
「どうだか。」
あ、いまの絶対他の女子に言ったらぼこられるよなあ……
そんなことを考えていると、また窓辺から黄色い声があがった。ダンス部の練習が終わったのか、女子が一斉に昇降口へと駆け出し、教室にはあたしと才夏だけが残された。
「才夏はいいの?さっきまで散々あいつのことを言ってたけど。」
「別に。私、男子そんなに好きじゃないし。」
……ほんとに才夏は謎だ。男子の話をよくするくせに、男子はあんまり好きじゃないし、秀才のくせに友達もあたしくらいしかいない。
ほんと、なんなんだろう。才夏は……
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