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途端に菊池の表情が晴れ渡る。手のかかる姉だなと太一は苦笑を漏らし、
「よかったよかった。これであの写真を使わずに済む」
「……写真?」
「おう」
これだ、と菊池は懐から一枚の写真を取り出した。受け取り見てみると、そこには大勢の男に囲まれながら木刀片手に大立ち回りする黒髪の少年が写っていた。というか太一である。
それを見た太一の目が陰る。
「これは……?」
「こないだ学校帰りに偶然見かけてな。こりゃすごいと思って写真撮っといた」
つまり太一が菊池の頼みを断っていたらこれを盾に脅迫する気だったのだ。もはやなにも言えず太一はうなだれる。そんな太一の背中をばっしばっしと叩く菊池はとても素敵な笑顔だった。
それからずっと菊池に絡まれ続け、授業そっちのけでトークするふたりだった。明日朝九時に学校に来るようお達しを受け太一は廊下へ出た。
そしてそこにずらりと揃った人人人。
「え? なにごと?」
「おい天神、さっきのいったいなんだったんだ?」
「急に目の前に現れてたけどどうやっ」
「もしかして天神くんずる休みして」
「菊池先生となにしてた」
「うらやまし」
「天神くん」
「天神」
「天が」
「だーっ、うっせぇぇっ!!」
もはや誰がなにを言っているのかわからなくなり、あまりのうるささに太一は怒鳴る。
「質問はひとりのみっ。はい、そこの君!」
「聞きたいことはどうやって現れたのか、あとここで菊池先生となにをしていたのか」
ひとつって言っただろとツッコみかけるが、生徒会室の出入口を完全に塞ぐほどの数の人間を相手にそれを答えるだけで済むのなら安いものだ。
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