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「さっきのは俺の手品、先生とは話してただけ。だからここ通し──」
「うそっ、天神って手品できたのか!」
「天神くんすごーい!」
「ほんとに話してただけなのか?」
「他にはどんな手品ができる」
「さっきのタネ教え」
「菊池先生ほんとなんで」
「天神くん」
「天神」
「天が」
「だぁから黙れってー!!」
適わないとばかりに太一は生徒会室へ逃げ掃除ロッカーの中へと逃げ込んだ。当然聞きたいことがある生徒達は追い縋りそのくすんだ木製の戸を開く。しかし、
「いない!?」
たしかに掃除ロッカーへ逃げ込むのを見たはずなのに、開けてみればあるのは汚い雑巾と箒とちり取りのみ。こうなっては仕方がない。聞く相手を菊池へと切り替えるが、
「あれ、先生もいないぞ」
まだ生徒会室の扉は生徒で塞がれており窓も鍵が開いていない。つまり完全な密室だ。にも関わらずふたりの姿はどこにも見当たらない。
まさにスーパーイリュージョン。生徒達は一斉に沸いた。
* * *
「ふぅ、しかしびびった」
校内の廊下をすたすたと歩きながら太一は呟いた。実はずっと靴を履いたままなのだが、途中から脱ぐのが面倒臭くなりそのままにしている。
「あ、やっと来た」
下駄箱に着くと見慣れた姿が目に入る。
「麗奈? なにしてんだこんなとこで」
「太一を待ってたの。どうやってみんなを切り抜けてきたの?」
「掃除ロッカーに入って転移してきた」
「あー、なるほどね」
納得して頷く麗奈とともに帰路につく。太一の服装が何度も注目を集めたいたが気にしても仕方がないと諦めた。
「それより太一、この間のメールなんなのよ」
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