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アドランドで知る唯一の人物を思い浮かべるが太一は首を振った。
「じゃあ誰と……て、そういえばその服なに? さっきから気になってたけど制服みたいよね」
「みたいっつーか制服。実は向こうで学校に通ってんだよ」
「は?」
意味がわからないといった感じの幼馴染にアドランドで学園に通っていること、その中のひとりとケンカをしてしまったことを簡潔に説明した。
「そいつが向かいの部屋に住んでるから居づらくて……」
「それで帰ってきた、と」
「情けなくもその通り」
「まったく……」
麗奈は首を横に振る。呆れてものも言えない。
「それで、いつまでこっちにいるの? わたしとしてはこのままいてくれてもかまわないけど、やっぱり向こうに行くんでしょ?」
「まだやり残してることがたくさんあるしな……まあ、日曜には帰る予定だ」
そっか、と麗奈は寂しそうに呟いた。そうこうしているうちに依川家へと到着する。
「じゃあね。明日遊びに行ってもいい? 綾も連れて」
「あー、俺明日剣道部の練習試合に出ないとならなくなったから遊べねえんだわ。悪い」
「そう、なんだ……」
暗くなる麗奈の表情。それを見て太一は苦心し、
「多分午後からなら空いてるからさ、それから遊ばねえか?」
「大丈夫? 練習試合で疲れてるじゃない?」
これは麗奈なりの気遣いだった。ひさしぶりの故郷でゆっくりしたいであろう太一を無理に引っ張り回すのはよくないと考えたのだろう。しかし太一はそれを鼻で笑って一蹴する。
「俺が練習試合ごときで疲労を感じるとでも?」
「……思わないね」
「そういうことだ。じゃあまた明日な」
手を振りながら太一は依川家を後にした。
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