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「あでっ!」
地球とアドランドとの行き来を可能にする魔法、第三廻廊を抜け、毎度と同じように太一は尻から地面に落下した。
「くそっ、地味にいてぇ……」
優香とのケンカの件もあり太一の苛立ちはなかなかに高かった。
「つーかここどこ……」
第三廻廊は大雑把には場所を特定できるが細かいところまでは設定できない。下手をすれば道路のど真ん中に、なんてこともありえる。運よくそんなことはなかったのでそこは安心しながら尻についた汚れをはたき落とし回りを見渡した。
『……』
たくさんの人間が太一を見ている。正確には見慣れた制服を来た見慣れた人物達が長机に腰掛けて太一を見つめている。
「太一……?」
ものごころついた頃からずっと聞いてきた声が背後からした。ゆっくりと振り返ればそこには背中半ばまで伸びた黒に近い茶髪の女の子。左前髪をピンで留めたその人物は……、
「麗奈? つか制服? え?」
もう一度見渡し、気づく。ここは桜ヶ丘高校。太一が地球で通っていた学校である。
太一を含めその場にいる全員がフリーズし、
『ええぇぇぇぇぇぇぇっ!?』
絶叫した。
直後、ドバンッと教室のドアが開け放たれものすごい轟音を立てる。スライド式のドアをわずかにひしゃげさせながらひとりの教師が入ってきた。
「テメーらうるせェ。いまは授業中だろーが。自習でも静かにやれっての。ちっとは考え……」
教室全体を見渡しながら悪態をつく教師は生徒達の様子が変なことに気づき、それから目の前で他校の制服を身に纏ったツンツン頭を発見する。
「ろ……って、天神?」
「あははは……」
もはや苦笑いしか出てこない。
「せ、先生!」
ひとりの男子生徒が起立し挙手をする。
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