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「…………」
「…………おい! 勇聞いてんのか!?」
「なぁ?…………」
「全く、何やってんだよ!さっきからボーっとしてさ、ぶつかられても何も言わないし」
「ぶつかられた? …………誰に?」
身体を包む虚脱感とは裏腹に嫌に感が冴え、最悪の場面が脳裏に浮かぶ。
「覚えてないのか?」
「全く……何も」
「勇!! まさか!? ……歩きながら寝てたか?
」
「ぷっ! はははは!!!」
今のは本当に夢か幻?
いや、違う幻覚にしては生々しすぎる。
まさか、まさかな。だけど……
「なぁ、二人共。俺にぶつかった奴ってどんな奴だ?」
ふざける二人を怒鳴り散らそうかと思ったが今は一刻を争うと必死に聞きだすことに専念した。
「はぁ……女子だったよ。ぶつかってきたくせに謝りもしない無愛想なね」
「‥‥っ!?」
マジかよ……。
「どうしたんだ勇?」
やっと、勇の異変に気づき問い掛けた麗次だが、彼の言葉に聞く耳を持たず、勇は二人に何も言わず駆けていってしまった。
「おーい! どこ行くんだよ?」
光太はまだ何も気づかないようだ。
「………とりあえず勇を追い掛けよう!」
麗次はただ事じゃないと感じ、光太と二人で勇を追い走りだす。
「了解っ!!」
一方、勇は懸命に虚ろなイメージをたどり、走っていく。
「嘘だろ? 冗談であってくれよ。けど、もし…………いや、考えるのは後だ! 手遅れになる前に!!」
勇は駆けながら、自分の考え……いや、さっき見た全てが幻想。
くだらぬまやかしであってほしいと祈るかのように頭を振り払った。
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