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舞台にセットされたバルコニーから“ジュリエット”が現れた。
「う~ん・・・」
「どうかしました?」
舞台を睨み付けながら唸っているシンディに不思議そうにディックに尋ねた。
「あ、いえ・・・あの方どこかで見た気がして・・・」
「“ジュリエット”役の女性ですか?」
「・・・はい」
「黒髪の・・・女性ですか・・・」
「とても・・・お綺麗な・・・黒髪の・・・?」
黒髪の綺麗な女性・・・シンディの頭の中でその言葉が渦巻いた。
そしてそれはいきなりはじけた。
「金魚草のペンダントの人!」
ひらめきに口を開けた。そして静けさに気がつき口元を押さえて黙り込んだ。
「思い出されましたか?」
小さく笑いながらディックは言った。
「は、はい・・・」
顔を背けるシンディ。恥ずかしさを表した顔を隠したかったらしい。
再度静かになった劇場を“ジュリエット”のセリフが走った。
「「おお、ロミオ、貴方はどうしてロミオなの?お父様とは無関係、自分の名前は自分の名前ではないとおっしゃってください。それがお嫌なら、私だけを愛していると誓ってください・・・」」
「「貴女のおっしゃる通りにいたしましょう!」」
“ジュリエット”と“ロミオ”の互いの互いを愛する言葉が2人の口から次々と飛び出す。
舞台とは言えど、
むしろ舞台だからこそ、観客達は彼らの台詞に息を飲み、感情を入れ込んだ。
ただ、シンディは少し違った様子だった。
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