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「いえ・・・」
シンディの目は何処を見ているのか分からない。
「・・・」
対応に困った様子のディック。
「あの、帰りますか?お疲れでしょう?」
「・・・はい」
シンディの反応は相変わらず。
もう一度ディックが声を掛けて頷きながらシンディは立ち上がった。
若干足下がふらつくシンディの手を引き、やっと馬車までたどり着いた。
しかし馬車の中でもシンディの様子は変わることなく、屋敷に送り届けた後もシンディのおかしな状態が続いた。
*
部屋に帰ってベットに腰を下ろした。
壁際の鏡台に目を向けた。鏡台のイスには一昨日着たドレスが掛けられているままだった。
無意識に足が鏡台前に向かった。
ドレスの腕の部分が心なしか愛おしいものの様に感じた。
「・・・!?」
それから再び胸に痛みがあった。
そして何か黒い物が目の前を通る幻覚が見えた。
綺麗なブルネットの髪の毛が・・・
「・・・」
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