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ブラシをかけ終わると愛馬に馬具を装着し、手綱を引いて中庭へと連れて行った。
マリアと待ち合わせた時間までもう既に10分を切っていた。
5分経過しない間にマリアも馬を連れてやって来た。
シンディの乗馬服とは似ても似つかぬ白いフリルの婦人用乗馬服に身を包みそれと相性のいい白いミニハットを頭にちょこんと乗せている。
「何処へ行きますの?」
鐙に足をかけながらマリアが言った。
「そうだな・・・」
特に決まった場所もなく森の湖へと向かうとマリアが決める。
ズボン式のシンディは馬の背中にまたがったがスカート式のマリアは横座りに馬の背中に腰掛けた。
マリアの馬のスピードにシンディも合わせて走る。
元々郊外に建つシンディ宅、クオリア邸だが、馬に乗って走って行くと、どんどん深緑色の海が広がっていく。
「シンディ、わたくしは気になさらないで先に・・・」
「でも、悪いし・・・」
「元々、シンディの気晴らしにとお連れしたのですわ。貴女に楽しんでいただかないと意味などありませんもの」
「そう?」
「ええ。湖畔で待っていてくださいな」
微笑んで言うマリアの言葉に甘えて、シンディは手綱を引いて、追い鞭をかけた。
ぐんとスピードが上がりレオンも鼻を鳴らした。
脇に茂った木が並び舗装されない道を走った。
*
しばらく走った時だった。
数日ぶりの土の匂いと景色に気を取られていた。
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