街にて

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「・・・名前はあるのか?」 「あるんですか?カーデルさん」 逃げるようにしてアレンがカーデルに振った。 「ありませんよ。アレンさんの猫ですからねぇ」 困った様な口調で頬杖をついた。 「・・・名前が無いんじゃ困ったもんだな」 「ならお前が考えてくれよ」 ため息混じりのアレンを見てランスロットはしばらくしてから微笑を浮かべて、 「・・・なら遠慮無く、メスだよな?」 アレンとカーデルが頷いた。 「んじゃあ、“ジュリエット”だな」 「はぁ!?」 それを聞いたアレンは口を開けた。 「いいじゃねぇか“ジュリエット”宛に届いた子猫なんだからな・・・」 「そうかもしれないけど・・・」 「いいですねぇ」 カーデルも笑いながら賛同する。 「・・・勝手にしろよ」 「おい、機嫌悪くするなよ“ジュリエット”」 ランスロットはアレンに向けて言った。 「・・・」 アレンは何も言わない。ただ、再び膨れ面で荷物を片付け始めた。 「ランスロットさん、次の舞台はいつかしら?前回行けなかったし次は2人の活躍を見たいんですよ」 「それなら、明後日が次回公演だったと・・・」 「“ロミオとジュリエット”だなんてこんなお婆さんが見るもんじゃ無いかもしれませんがねぇ」 「いいえ、是非来てください。楽しみにしてるんで」 荷物を片づけていた手を止めてアレンが割って入った。 「いつもお世話になっているんで」 「そうなだな・・・是非」 ランスロットもアレンを見ながら頷く。
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