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日も西に連なる山脈に顔を隠して、シンディの屋敷に人が増えてきた。
優雅な曲がダンスホールを包んでいる。
その曲がかすかに聞こえるシンディの部屋。
年頃の貴族令嬢の部屋とは思えないほど簡素だ。
唯一飾り気のある鏡台の前にシンディは座らされていた。
「もう人が集まってきてるようですわ」
マリアが鏡に映ったシンディに向かって言った。
シンディはそれに返さず、ただ落ち着きなさそうにしていた。
「マリア・・・このドレス・・・選んでくれたのはうれしいんだけど、肩が出過ぎじゃない?」
「とても美しいですわ髪も綺麗にまとめましたし」
手を合わせて微笑んだ。
シンディのドレスはマリアのものに比べて大きく肩を出してあり、装飾も派手だった。
シンディは大きく出た肩をさすりながらマリアに顔を向けた。
「やっぱり、もうちょっと違うドレスを・・・」
「いけません」
マリアは一歩と譲らないようだ。
断固拒否という口調でシンディに言った。
「・・・」
あきらめたかのようにシンディは黙り込んだ。
「さぁ、ダンスホールに行きますわよ!」
シンディの手を取り立たせると舞うように部屋を出た。
久しぶりの友人のドレス姿に心を躍らせた。そのままダンスホールへと直行した。
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