第一章 私
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私は生まれた。 産声を狭い分娩室の中に大きく響かせて、生まれた。 この世に生を為すことに喜びを感じて泣いた。 1996年4月10日、午前3時15分。 私、美智は母の腕に抱かれていた。 今となってはその温もりなんか覚えていない。 まして、生まれた直後の思い出なんかない。 でも、きっと。 その時は、その瞬間は。 幸せだった、はずだ。 そんな感覚さえ今はもう思い出すこともできないけれども。
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