第一章 私

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私は育った。 すくすく、すくすく。 温和な母と、真面目な父。 2人の兄と、3年遅れて1人の妹に恵まれた。 幼稚園の頃は無邪気だった。 こんなに楽しい毎日が、一生続くものだと信じ続けていた。 母と父に挟まれて毎晩寝ることがとても楽しみだった。 小学生になって、勉強を始めた。 私は国語が大好きだった。 数多ある漢字、ひらがなの曲線。カタカナの直線的な描写。 すべてが美しかった。 なにより、私は作文が得意だった。 初めての授業参観の日、「わたしのお母さん」と題された作文を書いた。 私は周りの子とは違って、母を褒めちぎったりは決してしなかった。 その代わりに母が毎日していることの偉大さ、大変さ、私への愛情の大きさを描いた。 先生に褒められたっけ。
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