第一章 私

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何となく気づいていた。 私が小学3年生のころから、少しずつ家族旅行の回数が減った。 小学4年生になるころには、父はあまり家に帰ってこなくなった。 何が悪かったのかは分からない。 ……いや、きっと、私のことが原因だったんだ。 離婚直前にもなれば、父と母は毎晩毎晩喧嘩をしていた。 私だけ、髪質も、瞳の色も、父にも母にも兄妹たちにも似ていないからだ。 父は母が浮気をしたんじゃないかと責めた。 母は浮気なんかしていないと断固として否定し続けた。 私を見る父の目が冷たかった。
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