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――理事長side―――
楽しそうに出て行った二人を、私はやわらかい絨毯に埋もれながら見送る。
…それにしても、おもしろいのを連れてきてくれた。
さすが私の甥。
私が可愛がっている光に恋人ができたのは知っていた。
そして、自分中心に世界が回っているやりたい放題だった光が、手のひらを返したようにおとなしくなったのも知っていた。
おそらく、そうさせたのは「恋人」なのだろう。
叔父として、そういう「恋人」ができたのは喜ぶべきだろう。
だが。…素直に喜べない。光が高校を卒業したら、一緒に暮らす予定だった。
その「恋人」というやつも、光の我儘に辟易して、すぐに別れるだろう。
光は、私に泣き付いてくる。やっぱり叔父さんしかいない、と。
――そう、高をくくっていた。
しかし予想を裏切られ、今日光はここに「恋人」を連れてくると言った。
嗚呼、何て惨いことをする。私の方が光を愛しているのに。私の方が光を知っているのに。私の方が……………どうやって潰そうか。
そう思っていたのに…
光が連れてきたのは、「ネコ」にしか見えない、一見平凡な少年だった。
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