第四章 戦の前に

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   人と妖の争いは、長きに渡り続いていった。  折原の一族、九条の一族が妖退治の家系として、歴史の裏側に誕生したのはこの頃であろう。  二つの一族の働きにより、人間と妖の関係性は元の形へと戻っていく。  その時、ある妖が人間界に誕生する。  形無き妖は、他の妖に取り付く事で命をつなぎ、人を襲い命を喰らう事で力を蓄えていった。そして、その力を取り付いた体で受け止められなくなると、より力を持った妖に乗り替えていく。  その妖は、やがて人々の噂となっていった。  草木も眠る丑三つ時。  戸締まりを怠ると、妖が忍び込んできて人を喰らうという。人々は、その妖を「人食い」と呼んで恐れていた。  形無き妖は、その時には山犬の妖に取り付いていた。  人々の噂となっている妖の「人食い」は、折原一族の耳にも存在が知られる事となり、退治の依頼も入る程であった。  そして、いよいよ折原一族の中から、一番の強者が退治へと乗り出す事になる。  それから、数日後。  ある山間の集落に、その折原の者がいた。
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